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13. 出資戦略

瑞々しく時代と歩調を合わせる若い感覚に、我々の出資で事業の一端を託したい

若い感覚への出資をビジネスの選択肢に

僕としてはM&Aだけでなく、出資も重要な戦略と捉え、積極的に行なっていく考えです。なぜかと言えば、僕ももう46歳。30代中盤ぐらいまでは自分の能力や判断に絶対の自信を持っていました。自分が「こうだ」と思ったことは確実に成功への道だと何も疑わない。根拠はないけれど、なぜか確信があるという変な自信です。「世の中とズレが生じていない感覚」と置き換えてもいいでしょう。しかしこの年齢になって、その気持ちが少し揺らいでいます。SNSの主流がInstagramやTikTokになり、自分の感覚が何か違う……つまりは世の中とズレてきている気がして。これ以上、自分がメインで全てに突き進んでいくのは難しいし、危険だと思いました。

次々と新しい事業を打ち出していきたいですが、一つの選択肢として、小野写真館や僕個人から出資をするという道も有りだと考えます。具体的な事例として、茨城県の高校生だけで組織する会社へ、僕は出資しました。『Xtraveler』と言って、面白いのは「旅行ガチャガチャ」の考え方を実践したこと。ユーザー側が日程と予算を決めたら、自動的に旅行先と泊まるホテルが決まるというサービスです。サプライズツアーの一種と言えるでしょう。

『咲楽』を経営する我々のような旅館業は空いている部屋を提供します。例えば、「来週おおよそこの辺りのエリアで泊まりたい、予算は幾らまで。人数は何人」と必要事項を埋めたら、テクノロジーで自動の組み合わせが出てくるという仕掛けです。空いている客室を有効活用可能なため、その分安く泊まれますし、客室を提供する旅館側も利益を生み出せる。そういったウィンウィンのメリットが生じるビジネスモデルでした。

出資から枝分かれしていく大いなる可能性

僕がそこに出資したのは「ビジネスに興味を抱く茨城県の若い人を応援したい」という気持ちと、旅行が感動体験に繋がるジャンルだったため。そういう小野写真館の考えとリンクするビジネスであれば、会社としても僕自身としてもスタートアップに対する出資を積極的に進めていきたいと考えます。展開として、スタートアップした事業を小野写真館が買収してもいいですし、出資をしながら我々が経営に関わるのも面白い。そこはケースバイケースで最善の選択をしていきたいです。

若い人たちにとって、僕はいい意味で経営の相談役にもなれると自負します。僕がもともと金融側にいたことも、ここではプラスになるはずです。スタートアップした会社がスケールするまでは、CFO的な立場で財政面のアドバイスや、出資を受ける際の注意点も指摘もできます。今回は「茨城県」「若い人」「旅行」「感動体験」などのキーワードでヒットする事業のスタートアップに対しての出資でした。

我が県には茨城大学や筑波大学が存在します。実際に僕は筑波大学に在籍しながら会社をスタートアップさせようとする人材を紹介して頂きました。当然ながら、どんな事業でも出資するという訳ではありません。何かしら僕が出資する意図のあるものにしたいですから、自ずと茨城県だとか、写真だとか、感動体験などに沿った事業になります。条件に合う事業であれば、そこは積極的に出資という面で関わっていきたいです。

ビジネスに取り組む若い力を後押ししたい

出資ですから、もちろん失敗して損をすることもあるでしょう。しかしそこは積極的にやっていこうと思っています。単なる事業だけでなく、若い人の未来へ出資する意味合いもありますので。関わった大学側でもプレスリリースでは、かなり好意的な表現で僕個人や小野写真館を取り扱ってくれています。その時は単なるスタートアップの出資でしたが、かなり注目されるニュースにもなりました。

出資したビジネスが成功するのは嬉しいですが、必ずしも上手くいくことだけを重要視してはいません。「出資額がゼロになってしまっても仕方ない」の気持ちでは臨んでいます。率直に言って「当たればラッキー」ぐらいの感覚です。口出しもあまりしませんし、上手くいかなかった時に変な文句も言わないです。これからのことを踏まえた前向きなアドバイスはしますが。相手の権利や自由を奪うようなことは、当たり前ですが一切しません。自分でも節度あるきちんとした出資の姿勢を取っていると思います。我々が大きく損をしない範囲で、若い人たちの想いや可能性を後押しする形で行なっていくことが、僕や小野写真館の出資に対する考え方です。