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3. シナジー効果[BABY365編]

運命的なM&A成約によって、小野写真館が念願のテック企業へ進化

生き残るために必須な非接触型の事業モデル

過去に行なった経営計画発表会のいろいろな書面を見ると、2016年ぐらいからずっと僕が「我々がテクノロジー系の事業に入っていきたい」と口に出していたことを確認できます。本来ならこれまでにテック系の事業を自ら創り出さなければいけなかったのは充分に承知しています。しかし実現しないままに未曾有のコロナを迎えてしまった。

コロナが蔓延していちばん弊社がマイナスだったのは、当然ですが店舗からの売上が上がらないこと。密型のビジネスモデルである結婚式や成人式は、人と人との接触でしか利益にならない訳です。2020年の4月5月に緊急事態宣言が出たことで店舗は開けられない。その2ヶ月は売上が8割ほど落ちました。このまま、人対人、店舗型のオフラインといわれるところからしか売上の出ない事業では、将来もう一度同じ状況へ陥った時に会社を失いかねない。そう大きな危惧を感じました。

これはどうあってもオンラインによる非接触型の事業モデルを自分たちで今からでも創り出すか、早急に適宜なM&Aをしなければならないという意志を改めて持ちました。本来ならコロナ前から創り出しておかなければいけなかったこと。いざコロナになって、自分はそうすると口に出していたのに、なぜ今まで実現しなかったのだと、僕は猛省しました。こうなった以上、すぐにでもオンライン型の売上を創らなければ。そう考えていた時、本当に良いタイミングで『BABY365』の情報を確認できました。それが2021年1月です。まさしくこのアプリ、これ以上ない案件だと確信したのです。

事業モデルを完全にゲームチェンジできた

BABY365『BABY365』とは、毎日パパとママが赤ちゃんの写真をスマホで撮って1文を付け加え、それを1年間撮り続けて最終的にアルバムにするアプリです。まさしく我々が多くの方々へ提供したかった感動体験そのもの。写真を掛け合わせられるこの事業をM&Aしたことにより、我々はオンラインから非接触型の売上モデルを手にすることができました。つまりは小野写真館がテック企業になれたということです。我々は「フォトテック」とも表現しています。

このM&Aの成約によって事業モデルを完全にゲームチェンジできました。その意味で『BABY365』のM&Aは、僕が実家に戻り経営に携わった15年間で最も重要な出来事になったのです。競合10社がある中で、本当に絶対負けられないM&Aでした。コロナ禍でもずっと伸び続けているサービスですから、『BABY365』を入手できたことは我々にとってとてつもなく大きいです。

オーナーともいろいろ話をさせて頂きましたが、やはり当初はアプリビジネスなので売却先は基本的にはIT系企業を考えていたそうです。逆に写真館である我々が手を挙げたことに驚いたと言っていました。実際に手は多数挙がったものの、皆さんITのソリューションとしてサービスが欲しいという会社がほとんどで、リアルビジネスの会社はほんの数社。よほど衝撃だったのか、「リアルビジネスの中でも、まさか写真館が来るとは思っていなかった」と何度も笑顔で仰っていました。

パパとママでなければ絶対に撮れない写真

やはり『BABY365』というアプリのポイントの一つは、日本全国から売上を取れること。お金をかけてスタジオをつくり、プロカメラマンが素敵な写真を撮る。それも素晴らしいことではありますが、これだとその店舗からしか売上を生み出せません。

もう一つ、僕がテレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』に出演した際にも話した内容になります。これが『BABY365』最大の素晴らしさだと思っていますが、毎日撮影するパパママとお子さんとの距離感です。その距離感で撮れる写真は、スタジオでプロカメラマンが撮るものとは全く別領域。我々では絶対に撮ることができません。

お金をかけたスタジオ。教育をした優秀なカメラマン。コストをどれだけかけても絶対に撮れない写真がそこにはあります。お子さんを愛するパパとママが1年間をかけて撮り続けていくものなので、小野写真館とは決して競合になりません。ですが、我々の経営理念である感動体験の創出という意味においては全くやってることは一緒。だからこそ僕は『BABY365』を心から取得したかったのです。

大切なのは柔軟にバリエーション展開していくこと

『BABY365』はプロダクトを買収しましたが、スケールさせていくのも大事だけれど、それ以上に重要なのが、あの考え方をいろいろ転用できることだと思っています。ペットに関しての『UCHINOKO Diary(うちの子ダイアリー)』という全く同じ考え方のアプリも我々は展開しています。ドッグイヤー(犬年齢)があるので人間と犬の時間の過ぎ方が違うからこそ、貴重な1年間の日々を写真に残すことに深い意味合いが生じるのです。

ペットとの思い出づくりという領域で伸ばしていくことも一つですし、また、今後ウェディングの領域にも活用したいとも考えています。プレ花嫁の方々に向け、結婚を決めてから結婚するまでの1年間を対象にしたり、プレ二十歳という想定で成人式までの1年間とか。我々は成人式のビジネスもしていますから、とても繋ぎやすいと考えます。そもそもあのアプリ自体をサブスクにしてみたらどうだろう、など。いろいろな展開を想定できます。

課題対策として、ほとんどのスマホユーザーが何千枚も画像を入れたままにしている。スマホの画像は撮って満足してしまうところがありますから。それらを最終的にアルバムへ落とし込んでいく事業を、今後AIを組み合わせることで実現できるのではないかという想いもあります。このアプリを拠点に、今後様々なアプリビジネスを追求していきたいです。

テクノロジーで始まりアナログで完結する興味深さ

お子さんやペットだけでなく、『BABY365』の考えをきちんと横展開してスケールすることは凄くやりたいです。意外に本質なのは、小野写真館の店舗の入口はアナログだけれど最終的にはデータで売っていることが多い。そこにアナログのアルバムを付けるという考え。このアプリはテクノロジーの考えですが、入口は全てアプリで最後はフォトブック。です。

店舗展開は入口がアナログで最後はデジタルなのに、僕らが買収した『BABY365』のビジネスは、入力がテクノロジーで最終的にはアナログで完結します。それは凄く意外なこと。これを写真館がやるというのが強い意義、意味合いを持つと思うのです。その点を僕は心から実感しました。スマホに撮られた写真がしっかり切り取られた形で世の中に残していけるようにしたいと思います。