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記録者による前口上をリード文に代えて

九つの章に渡る『小野写真館3.0 ビジネス哲学』のロングインタビュー。熱い話を伺ったのは、まだコロナの存在が世に知られていなかった2020年1月の末日近くです。文章を構築した頃には、すでにコロナが世の中へ蔓延していました。

これまで小野写真館は、地域が災害に見舞われた時も、業界を揺るがす事件に襲われた際にも、社員全員の努力と時間の経過によって、大きな危機を凌ぎ、逆に飛躍するための糧としてきたことを知っています。

今回のコロナ禍は、日本国内に留まりません。皆様がご承知の通り、世界レベルで甚大な悪影響を及ぼしています。小野写真館3.0のビジョン。その方向性に歪みや妥協が生じることはないでしょう。

しかし、とてつもない迅速さと、より緻密な正確さが必要となったことも事実。必要な判断を一歩でも間違えたら、小野写真館に限らず、あらゆる企業が終焉を迎えてしまう。そういう危険性が高まっているのです。

九つの章からなる想いを綴った文章のみでは、この連鎖は成立しません。完結させるためには、コロナ禍から決して目を背けず、真正面から、小野写真館の経営者である小野哲人氏の考えを伺う必要があると考えました。

未曾有の状況を迎え、コロナ禍をどう捉え、対処し、克服し、小野写真館3.0をどう押し進め、そしてどう達成していくのか?
リスク回避のため、Zoomを活用して、急遽の追加インタビューを敢行しました。小野哲人氏が熱く紡ぐ言葉に、改めて刮目いただけましたら幸いです。

社長メッセージ【ビジネス哲学の拾 自社超克の章】

アフターコロナに、我々が一丸となって新しい価値観の感動体験を提供していく

必要に迫られる急激な変革

弊社はコロナ禍の緊急事態に合わせて全店舗休業の決断をしました。当然、売上はありません。とは言え、スタジオのビジネスは緊急事態宣言の解除後、徐々に売上が戻ってくるでしょう。しかし結婚式のビジネスを考えると、次々に披露宴が延期になっています。お客様の立場で考えると、今、披露宴をすることは、大きな心理的なハードルの高さを伴うはずです。

ですから、ある意味いちばん大打撃と言える業種かもしれません。弊社のビジネスは茨城県だけでなく、千葉県、東京都、神奈川県と広がっています。正直なところ、影響も甚大な状況です。厳しいのは「いつまで耐えれば乗り越えられる」という明確な時期が見えないこと。僕だけでなく、この世の全ての経営者にとって非常に厳しい局面が訪れています。

経営者の舵取り一つで、会社の存続そのものが危うくなる。本当に厳しい局面です。ただ、弊社にとって確実に指針となるものが、すでに出来上がっています。それが『小野写真館3.0』というビジョンです。
→ 小野写真館3.0(2020年1月公開)

「結婚式や成人式が明日なくなってしまったら、今の形のままならば小野写真館はなくなってしまうだろう。だから今後の3年5年10年をかけて、結婚式、成人式そのものだけに頼らない感動体験の提供に舵を切っていこう」と全社員に伝えました。

誤算だったのは、ある程度の時間をかけて行なおうとしていたことが、未曾有の事象により、目の前に迫っているということ。2030年に小野写真館はこうあるべきと考えていたものが、2021年や2022年にはそうなっていなければ生き残れない。2020年の3月くらいから本当に世界が変わってしまい、「我々は10年後に……」などと悠長に構えていられない状況がやってきてしまったのです。

好機にも変えられる弊社のアドバンテージ

ある程度の年数をかけていく助走期間がなくなった形で、我々は、今後どう展開していくか。これは前向きに捉えれば、逆に大きなチャンスにもなり得ます。もともと小野写真館グループのウェディングは少人数。国が50人程度というイベントの基準を出しましたが、そもそも我々は50人以下の結婚式がほとんどですので、3密対策をしっかりとっていけばチャンスになると確信しています。

それと現在考えているのが、披露宴会場自体を新郎新婦様の配信スタジオ的に活用するイメージです。リアルな結婚式を、例えば家族の10名や20名で行ないながら、友人たちはビデオ通話で繋いで結婚式を行なえないだろうか。そういう新しいウェディングの形を我々が生み出していける好機とも捉えています。

もしくは、例えば披露宴を午前と午後で貸切の二部制にする。親族だけの披露宴は午前に行ない、午後には友人だけを呼んで開催するなど。ありがたいことに、小野写真館グループが持つ会場は全て3密対策がしっかりとれますし、屋外のガーデンウェディングもできます。神社挙式もしっかり対策がとれるなど、いくつものアドバンテージがあるのです。

存続と展望。重要なのは攻守のバランス

フォトスタジオの概念で言うと、小野写真館グループは完全貸切型のスタジオCocoaというブランドがあります。そこは間違いなく、飲食を伴わない完全貸切型ですから、3密対策がとれているビジネスモデル。結果的にではありますが、現在の状況に先んじて、コロナ禍でも対応できるビジネスを実践していたのです。

成人式に関しては、成人式自体が開催されるかどうかわからない状況が、そう遠くない未来に待ち受けていると予測します。成人式を開催する、しないは、僕らでは到底どうにもできません。小野写真館グループは、もともと写真館から派生したブランドであり、二十歳で振袖を着て写真を撮るという文化を、より強く持っています。我々の既存事業において、生き残っていくアドバンテージがある。前向きに捉えての考えですが、現在の既存事業の何割かは縮小すると思います。縮小した分、小規模の新規事業をつくる。それらの新規事業を大きくして、既存事業などと掛け合わせ、新しい展開を生み出していく。それこそが、小野写真館3.0という進化の形です。

明けない夜はありませんが、このコロナ禍は、いつ明けるかがわかりません。この状況下で経営者がやるべき第一は、会社を守り抜くことです。しかし今は売上をコントロールできない。そこで僕の強みになるのは、かつて金融業に携わっていた点。僕が培ってきた資金調達に関わるノウハウは徹底的に活用したい。はれのひ事件や東日本大震災。家業を引き継いでからこれまでの間に、たくさんのことを乗り越えてきました。それら全ての経験を掛け合わせ、まずは小野写真館グループをしっかり存続させます。

しかし会社を守っていくだけでは、その先の未来に繋がりません。未来から逃げずに行動していくことが、本当の意味で求められています。辛くて大変という気持ちもありますが、逆境だからこそ起業家としてアドレナリンがたくさん出ているのも感覚として事実です。ネガティブな気持ちも、闘志に繋がるアドレナリンも自分できちんとコントロールして、目の前の存続と未来に繋がる行動という攻守のバランスをとっていきます。

我々が奇跡の成功を遂げるための絶対条件

僕は『ONE PIECE』や『キングダム』のアニメ作品が好きで、最近は時間もあるので『Dr.STONE』『鬼滅の刃』『約束のネバーランド』など新しい作品もたくさん視聴しています。我々の進んでいくビジネスが生き残り、さらなる成長を遂げるには、あの世界観しかない。そう考えています。好きなアニメ作品に共通しているのは、「目的に向かう理念がしっかりしている」、「どれだけピンチに陥っても決してあきらめない」、「仲間を大事にして、何があっても裏切らない」。これはもう絶対に覆りません。だからこそ、最後に奇跡が起きる。僕としては、そのロジックを疑うことなく辿っていく。リアル体験として、現状を打破し、さらに上へ行くためには、その考え方しかないと思っています。

小野写真館グループには、年に4回、全社員の集まる研修があります。2020年5月には、このような状況ですから、初めてビデオ通話で行ないました。会社の現状から始めて、アフターコロナの展望に至るまで。かなり突っ込んだ内容を1時間30分かけて話しています。「国難とも言えるこの状況は、皆さんの全員の力を借りなければ、小野写真館グループは乗り切ることができません」と熱く語りかけました。僕の感覚としては、とても前向きに捉えてもらえたという確信があります。

同時に、社員の皆さん一人ひとりが会社の今後について考えてくれていることもヒシヒシと感じました。小野写真館3.0に繋がる部分で、弊社のコアバリューは「何をやるか」ではなく「誰とやるか」に変えています。誰とやるかさえ間違えなければ、何をしたとしても世の中に何かしらの感動体験を提供できる。それが全てだと考えます。どうやって仲間たちと既存事業を再構築したり、新規事業をつくっていけるか。そういう僕の話を皆さんが凄く前向きに聞いてくれましたし、日々の業務でも辛い状況なのにとても頑張ってくれているのを感じています。本当に頼もしい仲間です。

覚悟と想いを行動で、大切な仲間に伝えたい

やむを得ない判断として、店舗休業により売上がなくなっても、社員の皆さんへの給料は、現在100%お支払いしています。事実だけを捉えると会社の死期を早める愚行かもしれません。そのことも理解しています。例えば給料の30%をカットするだけで1千万円浮きますから。でも、可能な限り、そうはしたくない。そこに固執する理由は自分でもわかりません。やはり僕自身が信じたいのは、それこそ仲間を最後まで大事にするアニメの世界観。

付き合いのある経営者の方たちから「それは間違っている。そんな綺麗事を言ってるレベルの事象じゃないよ。情で行動すべきではない」と言われます。でもこの状況には正解というものがありません。小野写真館グループは、ずっと社員の皆さんに支えられて存続と成長を続けてきました。マイナスからのスタートで、給料が低い時代も必死で頑張ってくれた社員さんが多くいます。こんな時だからこそ、皆さんを守る姿勢でなければ、僕の気持ちを完全に伝えることはできないでしょう。アフターコロナがやってきた時、改めて共に頑張り抜いていただくためにも、目に見えないモチベーションやお客様に向ける愛情の重要性を考えると、社員の皆さんへの給料面は可能な限り手を付けないでおきたいとは思っています。

この15年間、いろいろなメンバーと出会うことができました。様々な事業を展開したからこそ見ることができた景色も多くあります。それらを考えると、コロナ禍によって会社が終わってしまったら、ただの敗者の綺麗事だったと片付けられてしまうに違いありません。そうなってしまったら、僕は死んでも死にきれないです。自分を信じて、社員の皆さんを信じて行動した結果、3年後5年後10年後に、やはり我々は間違っていなかった、正しかったと振り返りたい。積み重ねた努力が花を咲かせて実を結ぶと、心から実感したいのです。僕は、我々は、どのような状況になっても、絶対にあきらめることなく信念を貫き通します。