小野哲人「トップ層が方向性を間違えなければ、組織は絶対に誤った方向へ向かわない」
小島耕「人が育ち、町が育ち、クラブが育つ。我々は、この言葉を大事にしています」
小野感動体験について話そうか。小野写真館で写真を撮ってくださったお客様は「感動体験ができた!」って、たくさんの友人知人に話してくれる。そうすると、もっとお客様が来てくださる。俺が社員に言っているのは「リアル感動体験の口コミで一点突破していこう!」ってこと。それは水戸ホーリーホックのことを俺がいろいろな人に話すのも一緒。今のオフィシャルパートナー契約のこともたくさんの場所で話してます。「水戸ホーリーホック、いいよ」と話して何人か引き込んでいるくらい。試合観戦にも誘ってるしね。これは小島に頼まれていることじゃない。だけど気がつくと、楽しいし盛り上がるから話してちゃってる(笑)。
小島おかげさまで何人もご紹介いただいています。何がありがたいって、本当に頼んでないのにやってくれるから(笑)。オフィシャルパートナーの関係性がこうあってほしいという理想型です。だからこそ僕らはそれに見合う楽しさを提供できるクラブチームでなければいけない。チームが強いとか、選手が素晴らしい人格者であるとか。そのための努力を惜しんでは駄目だと思っています。選手の素行や行儀が悪いってことになれば、それだけでオフィシャルパートナーされる価値がなくなる。そういう危機感は常に持っています。
小野小島はその点に関して非常に厳格で徹底している。オフィシャルパートナーする側の立場としては、とても心強いし安心感があります。
小島水戸ホーリーホックが水戸ホーリーホックであるべき姿を追求していく義務が、我々にはあります。そうでなければ、小野写真館を始めとする、ありがたい存在のスポンサーはついてきてくれません。そこは常に強く意識しています。だから哲人の言ってくれている内容は凄くありがたくもあるし、同時に身が引き締まる言葉でもある。オフィシャルパートナーすることを楽しんでいただき、たくさんの経験を通し、その気持ちを大きくしてもらえたら最高です。もっと言えば、気持ちも大きく、お金も大きくなれば、さらに最高です(笑)。
小野それはそうだね。俺も社員全員に言ってることですよ。会社を大きくして、入ってくるお金も大きくしていこうと。伴って、できることのスケールも大きくなるからね。それともう一つ。水戸ホーリーホックが素晴らしいのは、人材に対する考え方。入団して3年以内の選手に関しては、アツマーレの会議室で人間教育のカリキュラムを実践している。
小島座学の時間をとっています。スポーツ選手は全員が成功できる訳ではないし、一生プレイヤーとして食っていける訳でもない。だからこそ、考え方・生き方・哲学などを、本気で伝えています。
小野若い選手からしたら、最初は「何でこんなことしなくちゃならないの!?」って思うかもしれない。だけどきちんと教育に力を入れている水戸ホーリーホックの姿勢が素晴らしい。これはもう、選手愛って言うより他ないよね。組織の思想としても残っていくものだし、そういうチームは絶対に強くなっていく。基本的な部分で、このチームは良い方向に進んでいくと確信しました。俺もそういう想いで会社を経営しているから、深い部分で理解できます。
小島ここも確固たる共通項だね。
小野たとえ社員から嫌がられたとしても、「ミッションだ」「ビジョンだ」「コアバリューだ」って言い続ける。自分が入社したての頃に言われたら嫌なのも自覚しているけど、後で絶対に感謝することも確信しています。10年後20年後に「これを繰り返し教えてもらえて良かった」と思ってもらえるだけでも、経営者としては幸せ。それを水戸ホーリーホックは継続して根気よく実践しています。それも強く共感するところです。
小島「人が育ち、町が育ち、クラブが育つ」。この言葉を水戸ホーリーホックは大事にしています。人が育って、それに伴い町が育ち、最後にはクラブが育つという。我々にはそういう重要なミッションがある。最初の「人が育ち」の部分で言うと、小野写真館にはインターンで、これからお世話になりたいと思っています。
小野水戸ホーリーホックの選手がインターンで働く企画だよね。俺らの同級生である大野君の株式会社オスクが実践して凄くバズった。あれは小野写真館も同様の形で絡ませてもらいたいと思ってます。正直言って、あの企画では大野君に大きな羨ましさを感じたから。
小島インターン企画を実施したところ、他のスポンサー様から前向きなお問い合わせが多くありました。株式会社オスク様は、その意味で言うとビジネスに展開できたので非常に良かったです。小野写真館には、これからそういうインターンをぜひ多く受け入れていただきたい。
小野OK!というか、こちらこそ、ぜひともよろしくお願いします。「きちんと人を育てよう」の信念に基づいた、本当に良い取り組みだと思うから。俺が言うのもおこがましいけれど、トップ層の考え方が方向性を間違えなければ、企業も含めて組織は絶対に誤った方向へは向かわない。
その意味で水戸ホーリーホックは、これからもより一層、素晴らしいステージへ進んでいくクラブチームだと確信しています。
記録者のひとりごと
長時間に及ぶ二人の対談から感じたこと。それはいかなる話題でもリズミカルに心地良く進んでいく会話の軽妙さ。内容は、時にユーモアに富み、時に傍聴する記録者がハッとする程の核心を突く。両者の相性が非常に良いからだ、と思う。高い位置でトップ同士の感覚がスイングしているのだから、組織同士の協力関係が向かう未来が明るいのもまた、当然のことだと記録者は認識せざるを得ないのだ。この場で同席できた僥倖に、感謝。