死ぬこと以外かすり傷だから、失敗も大事な経験値!
躍進を目指す人材こそが、企業にとって最大の資産である!
今、一番大事だと思うのは人材教育ですね。弊社には真面目で頑張り屋なスタッフが本当に多い。その意味でも僕は人に恵まれている。これから企業を大きくするためには、まず僕自身が成長しなければ上のステージには行けない。
そして共に頑張るスタッフに、どういう教育の場を与えるかが大事。教育の場であるのと同時に、挑戦する環境でもあります。座学や研修も大切ですけど、僕が一番必要だと考えるのは、実践の場、ですね。
例えば、マネージャーの教育を徹底して行ない、この基準に達したら、どこどこのお店を任せるという手もありますが、僕らはまだまだ上場もしていない中小企業。「とにかく、やってみろ」と任せてしまうんです。失敗しても、それは僕の責任だから、「いいから、まずはチャレンジしてみろ」と背中を押す。
これまでもそうやって場をつくり、人材を組み入れてきました。実践で成長するのが僕の基本の考えです。とはいえ、それだけでは難しい部分もあるため、今は月1回、第2水曜日を会社の定休日にして全社員を集める研修を始めました。人材の力を高めるための研修ですね。
もちろん!どの業種もそうでしょうが、特に我々はサービス業なので、最後の決め手は、やはり人になる。どんな理屈や戦略、どれだけお洒落な写真、可愛いドレスがあっても、そこに関わる人間が全てを駄目にもするし、また、成功にも導く。小野写真館グループにとって一番大きな資産は人材だということ。
人材は決算書に載らない大事な資産。ありがたいことに、元気で熱い想いを持つ人間が多く集まってくれています。皆の能力を最大限引き出すのはトップである僕の役割ですから、そこは何とか頑張っていきたいですね。
大枠の考えやコンセプトなど、何かを決めたり行動に移す段階で、僕はあまり口を出さず、本人に任せるようにしています。危なっかしい兆候を見つけ「このまま進めていったら失敗しそうだ」と感じても、だいたいはそのままやらせる。結局、僕が軌道修正してうまくいっても、自分がやり遂げたことにならないから。良くも悪くも結果を噛みしめてもらう方が大事だと思っているんです。だから僕は我慢して口を出さずに、悪く言えばスタッフに丸投げしてる状態(笑)。
一つだけ心がけているのは、例えば、あるプロジェクトが始まります。普通の会社なら「誰々がやれ」と任命するものですが、基本的には「私がやります!」と自分から手を挙げる雰囲気、流れをつくって、自主性を促すようにしていますね。「最後まで自分がやります」と言い切った人間に、僕は基本、任せます。
マネージャー業もそうだし、プロジェクトもそう。そしていったん任せると決めたら、その人間を僕は徹底的に信じる。あまり見守り過ぎると僕が気付いてしまう部分もあるから、そうはしない。結論上のことを言うと、本人がやりたいと手を挙げたうえで任せたイベントやプロジェクトは、苦労しながらも結局うまくいくんですよ。自分で決めたことはこんなにも頑張るし、結果を出すんだなと驚かされる。本当に人は凄いなあと実感しています。
僕自身が一番わがままで、人から細かく指図されるのが大嫌いなので(笑)。だからスタッフにもそう接してる。そして「やる」と決めたら、ひたすら自力で頑張ってもらう。誰に任せるかを決める際、このメンバーに任せて失敗した時に「僕は心から責任をかぶれるかどうか?」の感覚を重要視していて。
これは採用でも同様。任せて、たとえ失敗しても僕が悪いし責任も全部取るって思えたら、逆説的に託すことができるんです。僕の基準はその点に尽きるので「何をやる」かも大事だけど、それ以上に「誰とやる」かを最重要視してます。事業展開はもちろん大事。僕の大事な仕事は、その船に誰を乗せるか決めるまで。
会社の根本的な考えや理念に賛同する人間であれば、自由に考え行動できる環境をつくりたい。船に乗るか否かは本人が決断すること。そして船に乗った人間は最後まで信じて任せる。成功してほしいけど、成功失敗って、実は第一義じゃない。
これも極論ですけど、僕が思うのは「死ぬこと以外、かすり傷」ってこと。失敗したら確かにダメージを負うけれど、冷静に考えればそんなに大したことじゃないんです。逆に僕もいろいろな失敗を繰り返してきて、それが貴重な体験にもなった。時に人の言うことを聞かず失敗したからこそ、自分の行動を変えられることもできたわけで。
だからスタッフへ「こうやればいい」と頭ごなしに命令するのは抵抗があるんですよね。失敗したら、それも大事な経験値。失敗を通して反省したり学んでくれるのであれば、結果、これ程安い投資はない。もちろん会社の根幹を揺るがしそうなミスだったら、さすがに「何やってんだ!?」って口を出しますよ(笑)。ただ、余程の致命傷になるプロジェクトはそうそうない。
正直、何でも成功した方がいいですけど、長い目で見た時に、そこで失敗したのであれば、僕はやはり起きた事象が正しいという考え。失敗して良かったからそうなったんだということ。そこで起きることは全て正しい。身を以て学べることが一番いい勉強ですから。
そうです。『アレーズ』と『バウム』は非常に大きな投資で何億も借金し進めてますけど、僕は実際、あまり口を出してないんですよ。小野写真館グループの将来を考えた時に、僕がトップとして何でも意思決断していたのでは、結局その程度のレベルに留まってしまう。これからは大きな規模の仕事を、スタッフが中心でやっていかないと本当の成長に繋がらない。
もちろん資金調達や大元の事業計画など、僕でしか成立しない仕事はやります。そうして場ができたら、そこ以降はなるべく口を挟まない。予算のことはうるさく聞きますけど。『アレーズ』と『バウム』は、現在、それぞれの支配人に任せている状態。これは本人たちにとっても、会社にとっても、また僕にとっても、やはり大きなチャレンジなんですね。
アンシャンテを立ち上げた時も、衣装など全ての仕入れを若い女性スタッフに任せました。同業者には、かなり驚かれるんですけど、僕は仕入れの現場にも行かない。ただ予算だけは伝え、担当であるスタッフに全部やってもらう。僕が衣装を吟味するより、いつも接客してる人が決めた方が絶対にいい。
結果、何が起きるかと言えば、社長である僕ではなく、自分たちが決めたからこそ、買ってきた衣装を何とかして出そうと営業を頑張るわけです。たとえその衣装が出なくても、僕は怒ったりしませんよ。でもやっぱり、人は結果を出そうと必死に動くんです。だから凄くシビアだし、大変だとも思う。スタッフは皆、ドキドキして動いてるだろうから。
そうでしょうね。それに、皆、本当に気のいい人間ばかりですから、懸命になってコストを抑え、いいものを調達し、利益を出そうと考えてくれる。不安は絶対あるだろうけど、ここを単純に大変だと思うか、それとも逆に楽しいと感じられるかが、向いてる向いてないの境目。楽しいと思えるなら、小野写真グループに即、合ってる。100%ストレスになるのであれば、1から10まで全部教えて管理してくれる会社に入った方が本人にとっても幸せ。僕は入社前のタイミングで、必ずそれは伝えるようにしてる。
この考えが決して正しいわけではなく、ただ社長としてたまたまそういう考えを持っているので、想いに賛同できなかったら互いに不幸。大変だとは思いながらワクワクもできるスタッフがいる一方、堪え難いプレッシャーとなり、考え、悩み過ぎ、萎縮するタイプもいる。僕はそこを申し訳ないと感じてしまうんです。決して、その人を追いつめるための指針ではないので。だから押し付けるつもりは全くない。ただ、少しでも賛同してくれるなら、一緒の船に乗って大きいところを目指そうぜ、そういうノリなんです。
非常に嬉しかったのは、言われたことをきちんとやる真面目なスタッフが、ある日、凄くセンスのある絵を描いた。それを別の人間が見つけて僕に教えてくれたんです。僕から見ても凄いと思える絵でしたね。試しにいろいろデザインさせてみると、実は素晴らしいセンスの持ち主だとわかった。
今は能力を活かし、デザインの仕事をしていますが、もし、その才能を見出すきっかけがなかったらって思うと、経営者としてゾッとします。人材を育てる側は、そういう目線で皆を見ることも大事だと、心から実感する出来事でした。
持っている能力を自然に出せる人間と、性格的に出さない・出せない人間がいます。出せないタイプが悪いわけではなく、それはあくまで個性の範囲。弊社のスタッフは気持ちの優しい人間が多いため、わかりやすく自分をアピールはしないけれど、実は熱い心を裏側に持っているタイプが多い。そういう多様性に富んだ個性を、僕たちがいかに見出して展開するかが、会社を成長させるための肝になるはず。スタッフの能力を見つけ、引き出し、発揮させるかどうかは、やはり企業次第だと思いますね。
僕は元々、家業を継ぐ気がなく、独立して起業しようと考えていた人間。写真とは全く違う道に進み、金融の仕事に携わっていました。その当時は、わかりやすく将来は金持ちになりたい、成功して、いい車に乗り、いいマンションに住み、女性にもモテたい。バラ色の人生が待っていると思ってましたね。必ずイケてる金持ちになる。そのためにもビジネスを成功させるんだと心に決めていました。今思うと、わかりやすい将来像ですよね(笑)。
金融の仕事をしていても、いろいろ思うことがあり、結果として家業を継ぐことになりました。実際に人を雇い、家業を進めていく内に僕の中で考えが少しずつ変わってきたというか。僕たちが写真を撮ることで多くの人を幸せにできる。また「アンシャンテをつくってくれて感謝します」という言葉をお客様から頂戴したり。同様の手紙もたくさんもらいました。僕も感激し、家業であるこの仕事は、やはり素晴らしい、そう思えるようになったんです。
会社を経営する中で、確かにたくさん悩みましたし、迷いもしてきました。乗り越えるための様々な経験から、僕自身の考え方のベースが少しずつ変化したということですね。今の若いスタッフと変わらない年齢だった頃の僕は、全然いい人間じゃなかった。比較すると、本当にいい人材が集まってくれてる。自分も全スタッフと共に成長できる環境を、小野写真館グループの土壌にしていきたいですね。